タバコとセピアな映画(金色の太陽はスープの色)


吸いかけのシガレットをぽいと海へ捨てていた頃の映画の話です。「太陽がいっぱい」アラン・ドロン主演。
たゆたうような、アンニュイ感あふれるメロデイーのせいで、色の付いた映画だったのかもしれない古い記憶をセピア(イカスミ色)に変えてしまう。

成り上がりを望む主人公が殺意を強くするヨットの食事シーン、魚の料理のナイフの使い方で階級的侮辱を受ける。

魚の時は、ナイフをペンハンドに持ち替えるのだそうだ。確かに日本の貧乏人の私が試してもヨーロッパ貴族の合理的なのには驚かされた。鉛筆を持つように握り変えると、骨に沿って線を引くようにナイフを走らすことが出来る。しかも、ナイフを線から横にずらすことで、簡単に身がはずせる。日本は、テーブルマナーだからやる式だが、むこうは、違うようだ。此の映画で、不器用な私がナイフ、フォークで楽に料理が楽しめるようになった。また此の映画がきっかけで、金色のコンソメが日本人の口に合わない理由も理解できた。スプーンをたてに飲み込むようにしないと、口腔で広がる味わいはない。太宰の「斜陽」のように啜ったのでは味の口腔での感覚は失われる。

シガレットとて同じ事、此の映画のメロデイーにあわせ、薫らせれば、至福の味わいとなる。
味の合理主義では、ヨット上のくわえタバコは・・・・・。ヨット上のロープを握っての身を反らせたくわえタバコ、緊張と波しぶき、アランドロンの顔へズームイン、考えただけでゾクゾクする。当然、当時の観客は、真似がしたかっただろう。だろうというのは、ヨット遊びが出来る人など日本では一握りもいなかったに違いないからだ。私の大嫌いな都知事になった作家は、「太陽の季節」でヨットを使ったが、此の映画と武田泰淳「異形の者」のパクリと思っている。(その頃を知らないのでマチガイやもしれない。)もう半世紀も前なのだから。アランドロンはインドシナ紛争、ベトナム戦争の前哨戦で、あのニヒルさを身につけたと聞いたが。話は脱線気味だが、おじいさんや、お父さんは、くわえタバコは真似たはずです。その時に困ったのは、タバコのパケージの色でしょう。

さー何色でしょう。

私も此の映画に出会ったのがタバコを吸わない高校生の時、テレビの再放送ってー奴だったと思うので、銘柄も色も知りません。文を書く前にビデオで確かめたいのですが、映画は映画館で上映されるために制作されたのだから、映画館でみたいという頑固さが邪魔していて、皆さん後で確認して下さい。

さて何色でしょう。ヒントは「階級を侮辱された主人公が吸っているのだから」です。

私は、ゴロワーズと考えた。そのこころは、階級がブルーカラー。

そう、黒タバコの独特の薫りでちょと太めの、パッケージが菜っ葉服のブルー。
私は、これを、色ざめセピアブルーと呼んでいます。パイプタバコの代用として、他の洋モクより味があり、何より安いので今もたまに買います。
この菜っ葉服のブルーのかっこよさに影響を受け60年代ヒットしたのが、私が日本の「労働者のタバコ」と呼ぶハイライトでしょう。こちらは、高度成長期のはじめらしく、光沢のあるマリンブルーです。こちらも、フィルター付きながら、ブルーカラー用の味があります。
影響どころか真似と思われるタバコが、70年代に現れた事をご存じですか。『宙』と書いて おおぞら’と読ませたと思います。味はお粗末だったと思いますが、その頃は、現在のようなロングサイズの時代だったのに、なんとゴロワーズとおなじ寸詰まりで、50年代よろしく、胸ポケットに入るサイズだったのです。色は、『宙』大空ですから、スカイブルー。その色に惚れ「胸ポケットから取り出す仕草に男のロマンを感じる」という、友人がいた私の他に、こんなダサイ、タバコを誰が覚えているでしょう。
90年代はブルーカラーの青でなく、マイセンや青磁など多彩なブルーを目にすることが出来ます。私もシシリアンブルーやペルシャンブルーに惚れています。たまには、ゴロワーズの菜っ葉服ブルーも見て上げて下さい。

         ブロー・・・ブリュー・・・ブラン  玄豆屋主人拝

この菜っ葉服ブルーが何の色なのか分かる方ご一報をください。
『宙』を見たという方も

おもしろタバコ(シガレットのみ)    シガーはソムリエに聞いて見れば・・・・・。

ジタン。。。青地に黒いジプシーの踊り子(フランスの頑固な印刷術がゴロワーズと同じ)

ゲルベゾルテ。。。丸くない珍しいタバコ(ドイツ帝国の気品ある箱、日本では恩賜のタバコだけ箱入り。)

クレオパトラ。。。名前と黒タバコっぽい薫りがエキゾチック(当然、エジプト)

リンク先に、私の御用達の店、シガーもある、オイルジッポーもある野村屋さんを入れてあります。



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