十九世紀後半の物と思われる幻のマデイラ酒、テランテスに巡り会う


1999年2月十五日、夕刻、玄豆屋御用達の酒店より、「十九世紀のマデイラ酒のオファーがきてるんですが、」一報がはいる「買えるわけないよ」「あなたしかいません」「そりゃー、そうだよマデイラじゃなー、」私もさして興味の湧く話しでもなかった。値段が手頃なので「百年なんてウソだろもう一度確認しなよ」眉に唾をつけながら二本だけ頼むことにした。私がマデイラをつかうのは、あくまで料理用としてで、普通のマデイラでも、料理用には少し高いのに。いつもの年なら、赤ワインを買い込んでしまうので、付き合うつもりもないのだが、赤ワインがブームになり、酒店の店主が、「飲み頃になれば値が下がってますよ。」その言葉を信じてヴィンテージ・ワインを仕込まなかったので、ほんの冗談で手に入れた。封をあけ、ショットグラスに移し替えたとたん、その琥珀色の艶、瞬く間に広がる薫りに驚愕し。口に含んだとたん、一瞬のうちに口腔全体に気品と満足感があふれる。あわてて追加注文を入れたのは言うまでもない。

マデイラの蘊蓄
マデイラはポルトガルのリスボンから、1000km離れた大西洋上の楽園の島。
ポートワインのようにアルコールを強化したもので、22度ぐらいのアルコール度数となる。
あらゆる料理の食前酒、または、食後酒として使われてきた。
近年は、主にフレンチキュイジンヌの味付け、薫り付けとして重要な位置を占めている。
   
ポートワインブームの衰退とともに甘さが嫌われ飲み物としての価値は失われてきた。
私も飲むものとは考えていなかった。ちなみに私のマデイラソースは、厚めの牛肉をフライパンで焼き、マデイラでフランベし、肉を上げたあと、火を下げアンチョビとマデイラを足し入れ、鍋を綺麗に掃除しながらアンチョビを溶かし、さらに生クリームでなめらかにした物。

今回のマデイラは、ただフランベして、それをソースとしただけで得も言われぬ味と薫りが得られた。

現存する世界最古の葡萄品種テランテス、少数の株が接ぎ木されることなくマデイラ島に残された。
  「ワインを造るために神がくれた葡萄」
二十世紀にはたった一度のヴィンテージしか出来なかった。

その十九世紀の幻のマデイラ酒の名は
      「テランテス・オールド・レゼルブ・ジャステイーヌ」

玄豆屋がこのマデイラを手に入れたあとに、ブルータスの増刊号で建物の特集号にヒュー・ジョンソンが二十世紀のワインを語っている記事の中に、「食後酒は1837の・・・・・のマデイラ」の記述を見つけた。しかも、「いま、マデイラは買い得だ」の文字に私は思わずほくそ笑んでしまった。

ポート、トカイ、シェリー、そしてマデイラは、総てお買い得だろう。と、

四月にテランテスを再入荷します。この世の楽園を体験したい方はCAFE DE NUIへお越し下さい。

アイルランド、または、イギリスへ行かれる方、または、コネクションをお持ちの方シェリーグラスを二客買ってきて下さい。
 ウオーター・フォード クリスタル(社名) メイブ(シリーズ)連絡は玄豆屋へ。


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